今この記事を読んでおられる方は、おそらく大腸内視鏡検査を受けてみようかと悩まれているのではないでしょうか。
厚生労働省の統計では、2021年の大腸がんの罹患数は男女とも1位、2023年の大腸がんの死亡数は、肺がんに次いで2番目に多いと報告されています。[1]
また、大腸がんは40歳代から徐々に増え始め、50歳代になると急増しています。[2]

そして悩まれている要因の一つとして、検査前に飲む腸管洗浄液が挙げられるでしょう。
「美味しくない」「量が多くてつらい」と周囲から聞き、迷われている方もいらっしゃいますよね。
この記事では、腸管洗浄液を飲む必要性や飲み方のポイント・注意点、種類についてわかりやすくお伝えしていきます。
ぜひ最後まで読んでいってください。
前処置はなぜ必要?

大腸内視鏡検査前に腸管洗浄液を内服する理由は、腸内の便をできるだけ取り除き少ない負担で安全・安楽に検査を受けてもらうためです。
では、なぜ腸内をきれいにしなければならないのでしょうか。
もしきれいにならなかった場合に起こりうる影響について説明していきます。
病変の見落とし
前処置が不十分の場合、視野が悪くなり便に隠れてしまった小さなポリープや早期がんがみつかりにくい可能性が出てきます。[3]
患者の苦痛の増加
視野が悪くなるため、腸管内の便を洗い流しながらスコープを進めていかなければいけません。そのため多くの水や空気を入れることになり、それに伴って腹部膨満感や張り・痛みが生じやすくなります。[3]
検査時間の延長
スコープの進むスピードが必然的に遅くなるため、必要以上に時間がかかることで身体的・精神的苦痛が強くなる可能性が高くなります。[3]
偶発症のリスク増加
腸の中が見えにくい状態で無理にスコープを進めると、まれですが腸に傷がついたり穿孔(穴が開く)の可能性も出てきます。[3]
また鎮静剤を使用している場合、痛みや覚醒により鎮静剤を追加せざるを得ない状況になる可能性があるため、鎮静剤による副作用のリスクも高まることが考えられます。

再検査に伴う費用
正確な検査ができなかったときは再検査になることがあります。[3]
その分通院や費用、準備の負担も増えてしまいます。また、検査に対する精神的・身体的苦痛をさらに与えることになり、患者さんにとっては大変しんどい結果となります。
葉月えつこなぜ大腸内視鏡検査の前に腸内をきれいにしなければいけないか、イメージしていただけたでしょうか。
腸の中がどれだけきれいになっているか否かは、正確な検査を行い少ない負担で終えるための、大切なポイントとなります。
“つらい”“美味しくない”の理由


正確な検査を行うためには、腸管洗浄液の内服は欠かせません。
しかしこの腸管洗浄液が“つらい”“美味しくない”と感じられることも少なくありません。
いったいなぜ、そのように感じてしまうのでしょうか。
ここでは考えられる理由を4つ挙げて説明します。
洗浄液の味の問題
“美味しくない”と言われている腸管洗浄液には、どのような成分が含まれているのでしょうか。
腸管洗浄液にはポリエチレングリコール(PEG)やナトリウム・カリウム・マグネシウムなどの電解質やクエン酸が含まれています。さらに香料や甘味料が加えられ、飲みやすいように調整されています。
ただし、独特の塩味や金属のような風味、甘味が混ざりあうため「飲みにくい味」と感じる方が多いと考えられます。[4]
2Lの液体を2時間で飲むこと
腸管洗浄液は種類によって飲む量が異なりますが、多くは約2Lの洗浄液と水(またはお茶)を2時間ほどかけて飲みます。
ふだん一度にここまで水分を取らない人にとっては、2時間で2L前後飲むこと自体が大きな負担となります。[4]
軽い腹痛やお腹の張り
腸管洗浄液を飲むと、お腹がグルグルしたり少し痛くなったり張った感じになることがあります。[4]
これは薬が効いて腸がしっかり動いているサインで、前処置が終わると多くは落ち着いてきます。
ただし、我慢ができないほどの強い腹痛・繰り返す嘔吐・気分不良やふらつきなどあれば、自己判断せずすぐに医療機関に連絡しましょう。
トイレへ頻回に行くこと
腸管洗浄液は腸の中に水分を引き込み腸の動きを促すため、その結果「大量の下痢」を起こして腸の中をきれいに洗い流します。そのため、短時間に何度も水様便が出るようになります。[4]
患者さんにとっては「トイレから離れられない」「漏れそうで不安」といったストレスにつながりやすい点です。
少しでも楽に飲むための工夫


腸管洗浄液の「つらさ」や「味」が少しでも改善できれば、大腸内視鏡検査へのハードルはぐっと下がります。
腸管洗浄液を飲む前の準備や飲み方を少し工夫するだけで、身体的・精神的負担が軽くなることがあります。
ここでは、腸管洗浄液を少しでも楽に飲むための具体的なコツや、医師に相談しておきたいポイントを解説していきましょう。
冷やして飲む
腸管洗浄液を冷やして飲むと、においや味のクセが軽減し飲みやすくなります。[5]
冷蔵庫で冷やしてから飲むことをおすすめします。
ただし、あまり冷やしすぎないようにしましょう。腸の動きが鈍くなり逆効果になりかねません。
少量ずつゆっくり飲む
腸管洗浄液は急いで飲むと吐き気をもよおしやすくなります。とくに最初の1〜2杯(1杯約180ml)は、15分ほどかけてゆっくり少量ずつ飲んでください。[6]
また、腸管洗浄液を飲む合間に水やお茶で口直しをしても良いでしょう。口の中をリフレッシュさせることで最後まで飲み切る助けとなります。
2~3日前からの食事制限
腸管洗浄液の効果を高めるためには、検査の2〜3日前から消化の良いものを選び、腸内に食べ物が残らないようにすることが重要です。その結果、腸管洗浄液の量を減らせることにもつながります。
食事制限の日数や内容は、医療機関によって異なるためご確認ください。
普段から便秘気味の方へ
普段から便秘傾向の方は、下剤を検査の数日前から服用することで腸管洗浄液の効果を高める可能性があります。
検査を受ける予定の医療機関で医師に相談してみるのも良いでしょう。自己判断せず、必ず医師の指示に従ってください。
腸管洗浄液の種類


腸管洗浄液には、いくつか種類があります。
それぞれに特徴が異なるため、患者さんの年齢や状態・既往歴・味の好みなどに合わせて選択することが重要です。
大腸内視鏡検査を受ける予定の医療機関の医師とよく相談し、最適なものを選びましょう。



ここでは代表的な洗浄液の特徴を簡単にご紹介します。
| 製品名 | 内服方法 | 特徴 |
|---|---|---|
| ニフレック | 約2Lを2時間ほどかけて飲む。 比較的ゆっくりしたペースで飲む。 | レモン風味 |
| モビプレップ | 洗浄液を規定量飲んだあと、半量の水分摂取が必要。 | 梅風味 |
| マグコロール | 約1.8Lを1〜1.5時間かけて飲む。 | スポーツ飲料風味 |
| サルプレップ | ペットボトルの濃縮液タイプ。 1本480ml。 濃縮液を規定量飲んだあと、倍量の水を飲むを繰り返す。 | レモン風味の濃い味 苦味あり |
腸管洗浄液服用中の注意点


腸管洗浄液服用中「便意がまったくない」「お腹が張ってつらい」と感じることがあります。また「お腹が痛い」「気分が悪い」などの症状が出た場合、様子をみていてもよいのか、すぐに医療機関へ連絡すべきなのか不安になる方も多いのではないでしょうか。



ここでは、それぞれの対処法や医療機関へ連絡するタイミングなどを詳しく説明します。
便が出ない
腸管洗浄液服用中、なかなか便意をもよおさない・便が出ない状態であれば、以下の方法を試してみてください。
- 軽い腹部マッサージ
- 部屋の中を少し歩く[8]
腸管洗浄液を服用しても便がなかなか出ない場合は、検査を受ける医療機関の指示に従い、必要に応じて連絡をしてください。



連絡のタイミングは、医療機関や腸管洗浄液の種類によって異なります。検査説明時にしっかり聞いておきましょう。
また、場合によっては追加の腸管洗浄液や浣腸などの処置で対応させていただくこともあります。
すぐに連絡すべき症状
腸管洗浄液服用開始後、以下内容の症状があれば一旦服用を中止しすぐに医療機関へ連絡してください。
強い腹痛
気分が悪い
吐き気がする、吐いた
顔が青ざめる
息苦しい
めまいがする
顔がむくむ
寒気がする
じんましんが出る
など[6]
ご自宅で服用される場合はできるだけご家族など付き添いのある環境で行いましょう。
また、ご高齢の方や不安のある方は、医療機関での服用について相談してみるのも一つの方法です。
便が「きれい」になった目安


腸管洗浄液を飲み終えたあと「この便の状態で検査をうけても大丈夫?」と不安になる方も多いでしょう。
ここでは、実際に検査が可能と判断される便の目安について、簡単にご紹介します👇
色:薄黄色~透明
性状:固形物やカスが残っていない[9]
多少の個人差はあります。判断に迷われたときは、遠慮せず医師や看護師にお尋ねください。
詳しいチェックシートや便のスケール写真は、検査を受ける医療機関から配布される資料を確認しましょう。
最後に


最後まで記事を読んでいただきありがとうございます。
腸管洗浄液に対しての不安や疑問が少しでも和らいでくださったら幸いです。
腸管洗浄液の味や量・トイレ通いの大変さを思うと「やっぱり検査はやめておこうかな」と迷ってしまうこともあるかもしれません。
しかし数時間かけて腸をきれいにすることで、小さなポリープや早期の大腸がんを見つけやすくなり、将来の治療や安心につながります。
「前処置がつらそうで不安」「自分で最後まで飲みきれるか心配」という方は、一人で抱え込まずかかりつけの医師や内視鏡専門医・看護師に相談してみてください。
あなたの体調や生活スタイルに合った処置の方法やサポート体制を一緒に考えてもらえるはずです。
この記事が前処置への不安を少しでも軽くし、安心して検査に向かうための一助となれば幸いです。
参考文献
【参考・参照】
[1]厚生労働省>統計情報・白書>各種統計調査>厚生労働統計一覧>人口動態調査>結果の概要>令和5年(2023)人口動態統計(確定数)の概要>第6表死因簡単分類別にみた性別死亡数・死亡率(人口10万対)>PDF
[2]政府統計の総合窓口(e-Stat)>統計データを探す>ファイル>全国がん登録罹患数・率/2021年>2-A/年齢階級別罹患数:部位別、性別>Excel>大腸(結腸・直腸)
[3]田近正洋,正木久典,医療従事者に対する大腸内視鏡検査の前処置に関するアンケート調査,日本消化器がん検診学会雑誌,2021年,59巻,6号,p1
URL:http://www.jstage.jst.go.jp/article/jsgcs/advpub/0/advpub_20032/_pdf
[4]前渋貴子,清水さやか他,大腸検査の前処置の負担感の分析:半構造化面接を用いた質的研究,関西大学心理学研究,2023,14号,p73-86
URL:https://kansai-u.repo.nii.ac.jp/records/23993
[5]2021年.メディカ出版.山本夏代.消化器内視鏡介助&看護パーフェクトBOOK.P91
[6]PMDA 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構>医薬品に関するおすすめのコンテンツ>患者向医薬品ガイド>患者向医薬品ガイド一覧>モビプレップ配合内用剤
[7]2021年.メディカ出版.山本夏代.消化器内視鏡介助&看護パーフェクトBOOK.p131
[8]2021年.メディカ出版.山本夏代.消化器内視鏡介助&看護パーフェクトBOOK.p117
[9]2021年.メディカ出版.山本夏代.消化器内視鏡介助&看護パーフェクトBOOK.p118.130




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